ためこみ症は理解されにくい
20年以上ためこみ症の夫と暮らし、モノに埋もれる我が家のことで私はずっと悩んできましたが、それは他の人にとって理解されにくい悩みでした。
当時はためこみ症やゴミ屋敷などの情報もなく、私はただただ目の前の我が家の状況と夫のモノに対する執着を不気味に感じていました。
私自身ですら何が原因なのかどうしてこの状況になっているのか理解できない事です。
私は両親や友人に相談しようと思いましたがうまく伝える事ができません。
「夫がたくさんモノを買ってきて家がいっぱいになり困っている」としか説明ができないのでした。
すると大抵の人は「モノがたくさんあるなんて別にたいした事ではない」とか「無いよりはいいんじゃない?」と言われたり。
部屋を見てもらうのが一番良いのでしょうけれどその勇気は私にはありませんでした。
今のように情報もなく我が家の状況が想像できなかったでしょうし、相談される方も困ったかもしれません。
周りに例が少なく理解されにくい家庭の悩みを持つ私は常に孤独を感じてきましたし、それは今も変わりありません。
そんな私がどのようなことで悩んできたのか、何を望んでいるのかをこの記事で書いています。
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片付けることのむずかしさ
夫はモノでいっぱいの状態の我が家を散らかっているとは認識しておらず、それが片付けることのむずかしさとなっています。
毎年私を悩ませたのは子どもがまだ学校に通っていた頃の先生の家庭訪問でした。
子ども部屋を見せてくださいと言われたらどうしようかとハラハラしながら1階の玄関でお迎えしていました。
3階の子ども部屋へ行くには2階のリビングを通らなければ行けないからです。
それどころか玄関ですら片付けきれないのです。少し進むとモノが溢れて入り口を塞いでいる夫の部屋が嫌でも目に入るのです。
下駄箱の上は私がどれだけ片付けてもすぐにいろんなものが載せられ、隙間が埋まってしまうのでした。
けれども先生が来る日は何としても少しでもマシな状態でお迎えし、何としても玄関から先へは進んで頂かないようにしなければと気を張っていました。
何より可愛い子ども達に恥ずかしい思いはさせたくありません。
家庭訪問の前日はとにかく余分なモノを箱に詰めてしまい、見えないところに隠しました。
捨てたらいいものばかりなのですが、捨てると夫が怒ります。
玄関のチャイムが鳴り、何食わぬ顔でお話をし、そしてやれやれ先生がリビングにも上がらずに帰っていかれるとホッとしたものです。
夫はそんな私を鼻で笑います。
「フン、お前は本当に見栄っ張りだなあ。」ある時家庭訪問の後に嫌な感じで言われました。
見栄っ張りってどういう意味で言っているのか私には理解できませんが時々夫から言われる言葉です。
「来られる先生が不愉快にならないように片付けたのだ」と反論しても伝わるはずもなく、その翌日からまた夫のモノが玄関に積まれるのでした。
今は子ども達も大人になり家庭訪問もなくなりましたがそれでも何年かに一度ガス会社の方が点検に来られたり、大型電化製品の修理や運び込みの時は私は逃げ出したくなります。
それは地獄のような恥ずかしさです。
一緒に住んでいる私もこの状態で平気で住んでいると思われるのではないかと身が縮みます。
夫はと言うと、まるで気にしないどころか自慢にさえ思っているようです。
相手はモノがいっぱいのリビングに通されて、目のやり場にも困っている様子なのに夫は気さくに話しかけます。
「いやあ、オレはもっと広い家に住みたかったのですがねえ。」などと笑いながらお客様に言うのです。
いえいえ、たとえ体育館ほどの家があってもきっと何かで埋め尽くすはずとそんな夫を見ながら私は心の中で呟きます。
わかってもらえない辛さ
そんな片付かない悩みを私はひとり秘密にしてきたわけではありません。
冒頭でも書きましたが自分も理解できない悩みを親や友人に説明するのは難しいものでした。
「ためこみ症」という病気を知ったのはほんの3年ほど前のことで、それまでは「買い物依存症」かなと思っていたのです。
買い物をすることに何かしらの快感を覚え、止められない病気だと思うのですがそれとは何かが違うと感じながらも他に何と言えばいいのかわかりません。
「うちの夫は買い物依存症で困っている。」
「夫の買ってきたもので家がいっぱいになっていてとても困っている。」
そんな私の悩みはいくら言葉で説明しても友人達に伝わりませんでした。
「女遊びやギャンブルよりはマシじゃないの。」と大半の友人は笑ってこたえました。
私もそれ以上は何も言えませんでした。
もちろんいろいろな問題でたくさんの方が家庭の悩みを抱えているのだと思います。同じく我が家の状態は夫以外の家族にとっては深刻な問題です。
私の両親も「誰でも欠点はあるものだから、多めにみてやらなければならない」と言いましたし、この悩みは他の人には分からないのだと諦めました。
身内の困りごとですし警察に通報するわけにもいきません。
私を含め、人は馴染みのない事、知らない事についての悩みに対して自分の感情を寄せていくのは簡単ではありません。
そして相手を励ましたいという優しさから「気にしなくていいよ。大丈夫。」などと肩を叩いてくれるのですが全然大丈夫ではありません。笑
わかってもらえない辛さを抱えながら「この不気味な状況は何なのだろう」と限りなくモノをためこむ夫を私は静かに見てきました。
「ゴミ屋敷」を作る人は心の病気である
ゴミ屋敷などの総称でくくられ、時々メディアに面白おかしくとりあげられたニュースなどを見ると、胸が痛みます。
それらの主は確かに変人かもしれませんが間違いなく心の病気なのです。
我が家も生ゴミや新聞紙などではないにしろ、同じ状態です。
ニュースを観ている大半の方達はゴミの山に囲まれた家の姿に気を取られ、その影にいらっしゃるご本人をはじめ、ご家族の存在にまでは気持ちがいかないのではないでしょうか。
「このお宅のご主人はどんな方だろう。ご家族はどのように過ごされているだろう。」と私は辛さが解るだけに我が身に重ねてしまいます。
その家に我慢して住んでいるにしろ、出ていかれているにしろ、ご家族は辛い思いをされているに違いありません。
「ゴミ屋敷」は例えば、片付け屋さんが来て一斉に片付けたとしてもそれで解決できる問題ではありません。
また、誰かが説得してくれたとしても簡単に解決できる問題ではありません。
これは心の病気であり、遺伝性、あるいは脳のどこかの部分の異常、その方の育った環境など、さまざまな要因の絡んだ難しい問題だと思います。
強制的に片付けてしまうなど表面だけ整えたとしても、ためこみの根本の原因を解決しない限り再び同じ状態にしてしまうでしょう。
私は専門家ではありませんがこれらのことは身をもって感じてきたことから思う事です。
怠慢で片付けないからゴミ屋敷になったのではなく、本人の意志でその状態にあるのです。
メディアでの報道に関しては、ぜひ興味本位になることなく、陰で苦しんでいるご家族がいらっしゃることを忘れないでいただきたいと心より願います。
ゴミ屋敷を作る人は「心の病気」なのだということが広く一般に認識され受け入れられる日が来ればこの悩みも理解されやすくなるでしょうか。
そうなれば私たち家族も救われると思います。
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