先日出かけた時にとてもカッコいい人を見かけました。
カッコいい人といっても俳優やアイドルのようなカッコよさではありませんよ。
見た感じ60代半ばくらいかなとお見受けした男性です。
穏やかに晴れたある日曜日の午前中、電車で出かけた時のことです。
電車内の座席は全て埋まっていて、立っている人がギュウギュウ詰めでないにしてもたくさんいる状態でした。
私は入り口ドア近くの吊革に捕まって立っており、前にはその男性が座っていました。
先に目を引いたのはその方の膝の上にはブランド物に疎い私でもわかる高級な大きなヴィトンのビジネスバック。
その持ち手部分にキャラクターのマスコットがひとつぶら下がっています。なかなか個性的。
身なりもきちんとされていてさりげなくオシャレな雰囲気です。「どこかの社長さんかしら?」などと私はふと思い、窓からの景色に意識を移しました。
3つ目ほどの駅で数人の客が乗り込んでこられ、ドアが閉まりました。
電車がまた動き出したタイミングで突然私の前に座っていたその男性が、立って3、4メートル先の年配の女性のところまで歩いて行き「座られますか?」と柔らかい声で尋ねたのです。
女性は首を横に振って「いえいえ結構です」と断られ、男性はにこやかに座席に戻って来られました。
そのままその男性は柔和な表情で座られ、終点駅に着くと颯爽と降りて行かれたのでした。ヴィトンのバックにマスコットをブラブラさせながら…。
その男性はわざわざ少し離れたところに乗り込んでこられた年輩の方に気づかないふりもできたはずです。
目の前に席を譲るべき方がいても寝たふりを通している人も多い中、久しぶりに心が洗われたようなスッキリした気持ちになりました。
その男性はきっと普段から電車以外の場所でもそのような親切さで他人と接しておられるのでしょう。
高級バックを持つにふさわしい「品」のある方でした。
余談ですが、たまに高級な車に乗っていながらマナーの悪い運転をされていたり、全身高級ブランドを身に纏った方が他人に横柄な態度をされているのを見かけることがありますが、そんな時本当に残念だなあと思ってしまいます。
せっかく良いものを持っていてもちっともカッコよくありません。
その男性がもしボロボロの靴を履いて、擦り切れたシャツを着ていたとしても私は同じように心を洗われたと思います。そこには人としての品があります。
身につけているものが高級でも質素でも「品」というものはそれとは別ですね。
見も知らない他人の方にも分け隔てのない思いやりをさりげなく出せる人は素敵です。
この「出せる」というところがミソで、心の中で思ってはいても行動に移せなければせっかくの思いやりも活かすことができません。
私を含め多くの人はこの状態なのではないでしょうか。
そうそう、思い出しました。自分のことを言わせていただきますと、かつて若い頃は私も率先して席を譲る人でした。
ですがある時年輩の女性に「私はそんなに年寄りではない」と一喝され、それ以来席を譲ることが億劫になってしまい、ならば座らなければいいではないかと今では座席が空いていても立っている次第です。
立っている限り譲ろうかどうしようか?と迷う必要が無いですからね。断られたらどうしようという小心者なのですね。
品でいうと「んー惜しいっ」ていうところでしょうか。笑
あの男性のように断られても柔和な微笑みを浮かべて悠々と席に戻って来れるのはすごくカッコいいです。勇気がありますよね。
それと席を譲られる方にも思いやりが必要です。
年齢的に考えると、私もそう遠くもない日に「こちらに座られますか?」と可愛らしいお嬢さんに声をかけられるかもしれません。
その時はチャーミングに「ありがとう」とにっこり笑って座ろうと思っています。
そんなこんなで、見ず知らずの方にも優しい気持ちを持ち続けたいなと思わせてくれた出来事でした。
私も品のあるかっこいい、可愛らしいおばさんでありたい。
それにしてもあのオジさんは品があってカッコよかったなあ…。
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